大奥
先月は寝る前に30分だけ、よしながふみ先生の大奥を読んで寝る、という娯楽で生き延びた社畜です。実況とゲームに手を出す前ね。
1周目に読んだときは面白すぎて夜更かししまくって読んじゃったので、2周目は真面目に1日1冊ずつ読みました。だけどやっぱり人痘の話の辺りは楽しくて、一気に2冊読んだりしてしまいます。序盤の悲恋や檻の中の悲劇も大好きなんですが、中盤からの病に抗う人々の情熱、終盤の終わりゆく幕府の虚しさや江戸を守ろうとする想いは、何度読んでも胸が熱くなります。
そうそう進撃の巨人のイェーガー派が出てきたあたり以降とか、ああいう、国の中に様々な考えの集団がいて、にっちもさっちもいかないような展開って、なんだか妙に大好きです。
今までの常識、今までの暮らし方、今までの権威が絶対的なものでなくなり、想像した予定通りの未来ではなく、まだ無い混沌としての未来みたいな……それで、そんな中で全員が幸せになれるわけでもない理不尽さとか、人々にとって幸福な結果になるか確証のないまま理想へ向かうこととか、読んでいて「じゃあ結局みんなどうしたらいいの?」の答えが無いとき、悲しいけれどワクワクもします。全員が全員納得する幸せな未来の共通解があっても困る、全員クローンかよ、という気持ちの裏返しだと思うんですけどね。
それはそうと一度栄えたものが、ゆるやかに沈んでゆく様を描く物語が好きなので、徳川家から見た大奥の物語は本当に胸を締め付けられます。で、よしなが先生の描写がまた異常〜〜に繊細で、わたしは、町を歩いても誰もお侍さんに頭を下げなくなった描写が好きです。細かいけどめちゃくちゃ深く抉られる……。
それから、理想に向かって結果が見えずとも向かい続ける姿勢って、もう胸が高鳴って止まらないので、田沼意次とか阿部正弘とか大好きです。しかも個人的には13代将軍・家定が推しなので、家定が馬で駆けるシーンは涙が止まりません。家茂もそうなんですけど、努力してきた人の悔しさを見せられることが何より歯痒くてこたえます。
……語り出したらきりがないのでやめますが、また何度も読み返すんだろうなって思います。だって最後には明治になったでしょう?!また家光の時代の江戸の様子も、すぐに振り返りたくなるじゃないですか!どうだったっけなって!長い時代を切り取った歴史物は、これが恐ろしい沼です。
それにしても男女逆転した大奥だなんて、めちゃめちゃにファンタジーなのに、ズルいくらいのリアリティで楽しいです。今年の推し漫画です。